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アナリ-ゼによるオペラ表現探求会(後の札幌室内歌劇場)第2回公演 
「新春コンサ-ト」

◇日時◇ 1991/01/18(金) 19:00開演
◇会場◇ 札幌ノースシティホール

 アナリ-ゼによるオペラ表現探求会(後の札幌室内歌劇場)第2回公演 

 「新春コンサ-ト」独唱・独奏・編作童謡による演奏会
岩河智子/編作 中津邦仁/演出
 
 
 

 

 

 
■日時:1991年1月18日(金)19:00開演
■ところ:札幌ノースシティホール「金柔の間」
■料金:前売・予約2,300円、当日2,500円 お茶・お菓子付き
■チケット取り扱い:4丁目プラザ、大丸セントラル各プレイガイド
 
■予約・お問合せ:札幌011-563-0507(時岡)、東京03-9-571428(岩河)
■主催:アナリ-ゼによるオペラ表現探求会(現在の札幌室内歌劇場)
■後援:札幌市、札幌市教育委員会、北海道新聞社、音楽家協議会、北海道二期会
■製作:アナリ-ゼによるオペラ表現探求会(NPO法人札幌室内歌劇場の前身)
 

■出演

  • 司会/石鍋多加史Bar
  • ピアノ/森喜代子
  • 則竹正人Bar
  • 時岡牧子SOP
  • 福地悦子Mezz
  • 桑野敏明Ten
  • 萩原徳子SOP 

■公演スタッフ

  • 演出/中津邦仁
  • 音楽監督/岩河智子
  • デザイン/森 喜代美(Office JACK)
  • 印刷/株式会社サンコ-コピ-ショップ 

■演目

【第1部 ‘91私の選んだ曲・・・】
 
司会/石鍋多加史Bar
ピアノ/森喜代子
  • 1.レスピ-ギ/「雪」「雨」   則竹正人
  • 2.ヴォルフ/「旅路」「古き絵の前で」  時岡牧子
  • 3.ショパン/「ソナタ2番より、第一楽章」  森喜代子
  • 4.ブラ-ムス/「歌の調べのように」「我がまどろみはいよいよ浅く」福地悦子
  • 5.フォーレ/「五月」「夢のあとに」、ドビュッシ-/「あやつり人形」桑野敏明
  • 6.トスティ「魅惑」、パイジェッロ「ジプシー娘をお望みなら」萩原徳子 

【第2部 岩河智子編曲童謡集(北海道初演)】

ピアノ/森喜代子
  • 1.「さくらさくら」/森喜代子
  • 2.「春よこい」/時岡牧子
  • 3.「かなりや」/則竹正人
  • 4.「黄金虫」/福地悦子
  • 5.「あわて床屋」/桑野敏明
  • 6.「めえめえ子山羊」/萩原徳子
  • 7.「冬の夜」/福地悦子・桑野敏明
  • 8.「鞠と殿様」/桑野敏明・時岡牧子
  • 9.「シャボン玉」/時岡牧子・則竹正人
  • 10.「里の秋」/則竹正人・萩原徳子
  • 11.「砂山」/萩原徳子・福地悦子
  • 12.「雨のロンド」/萩原徳子・時岡牧子・福地悦子・桑野敏明・則竹正人

曲目解説

【第1部 ‘91私の選んだ曲・・・】
会員それぞれが自由に選んだ曲で構成しました。
バロックから近代までにわたる様々な国の作品が並びました。どんな様式の曲も「アナリーゼ(分析)をしてファンタジ-を広げていく」という私たちの方法で料理しました。
 
1.レスピ-ギ(O.Respighi 1879-1936)
近代イタリア歌曲の作曲化であるレスピ-ギは、色彩豊かな和声と斬新な構成でフレッシュな歌曲を多く残しました。
①雪:
「静寂な雪の日、心の中では追憶の熱い愛の火が呼び起こされる・・」伴奏は、雪が音もなくひたすらに降り積もってゆく様な、低く静かな音型の繰り返し(オスティナ-ト)です。
②雨:
「渇ききった熱い大地に降り注ぐ雨は、木々をよみがえらせ、私もまた乾ききった植物のように慰めの雨を受けとめる・・」ピアノ伴奏が、早い雨足とさわやかな風を印象派風に描写しています。
 
2.ヴォルフ(H.Wolf 1860-1903)
後期ロマン派ドイツの作曲家であるヴォルフは、文学全般にわたる深い意味から歌曲作曲家への道を歩むことになり、短い間に驚異的な数の歌曲を完成しました。
旅路:
「見知らぬ町を旅する心のときめき。見るもの全てが新鮮な魅力に溢れている・・」躍動するリズムとめまぐるしいリズムで始まったこの曲は、ふと立ち止まって、もう一度美しい景色を深く味わうようなたっぷりとした中間部を経て、美の女神ミュ-ズを賛美する結末へと盛り上がります。
②古き絵の前で:
「マリアの膝で無心に遊ぶ幼子キリスト、平和な夏の光景の片隅ではすでに十字架の木が生え始めている・・」平和な聖母子画の中に未来の悲劇が暗示されるという印象的な曲です。色あせた絵画を笑わ表すような古い旋法が用いられています。
 
3.ショパン(F.Chopin 1810-1849)
ロマン派のポーランドの作曲家ショパンは、ピアノの詩人といわれるように、あらゆる情緒をピアノで表現しましたが、構成的な作品はいささか不得手だったのか三曲のピアノソナタのうち、第一番は失敗作といわれています。第二番、第三番はともに名曲で、どちらの一楽章もソナタ形式としては変則的な、第一テ-マの再現を欠く構成となっています。
ソナタ2番より、第一楽章:
深く苦悩するような下降音型で始まる導入部、続く提示部では、駆り立てられるような第一テ-マが一転して深く歌うような第二テ-マへと続きます。
情熱的に盛り上がって提示部を閉じた後、展開部では主として第一テ-マのモチーフが活躍し、再現部ではいきなり第二テ-マが現れます。
 
4.ブラ-ムス(J.Brahms 1833-1897)
ドイツロマン派の巨匠であるブラ-ムスは、オーケストラ曲やピアノ曲、室内楽曲のほか声楽の分野でも活躍しました。しかし彼の関心はオペラではなく、もっぱら合唱曲と歌曲に向けられていました。
①歌の調べのように
「歌の調べのように何かがそっと私の心をよぎる。言葉で捉えられない何かが・・」
三節からなるこの曲は有節歌曲(一番、二番と全く同じ形を繰り返す歌曲)の変形とでもいう構成で、各節の冒頭はどれも同じふくよかな美しい旋律で始まりますが、途中からは調やニュアンスに変化が加えられています。
 
②我がまどろみはいよいよ浅く」
 二節からなる悲恋の中に込められた情熱を歌い上げた歌曲。一節目「浅いまどろみから醒めた私は、あなたが訪ねてきたのが夢だったとわかりむせび泣く」。二節目「私は死ぬでしょう。ああ、もう一度あなたが私に会いにきてくれたら・・」
 
5.フォーレ(G.Faure 1845-1924)、ドビュッシ-(C。Debussy 1862-1918)
フランスの近代の歌曲は、ドイツの機能和声になれた耳には、曖昧な中間色風色彩に感じられ、新鮮な魅力があります。
①「五月」/フォーレ:
 「花咲きわたる美しい五月、自然の全ての美がおまえの額の上に、そしておまえの心の中に花咲いたようだ・・」二節からなる歌曲。微妙に揺れ動く伴奏型に乗ってソフトな語り口のメロディが歌われます。
 
②「あやつり人形」/ドビュッシ-:
 「下司な隊長スカラム-シュとせむしのプルチネッラ、ボロ-ニャの名医、色っぽい娘、その恋人の海賊。5人のあやつり人形が織りなす人形劇の始まり始まり!」前奏のモチ-フが無駄なく活用され緊密な構成となっています。伴奏部では、グリッサンドが現れたり、最低音(低いAの音)が使用されたりするなど、ピアノ書法も才気にあふれています。
 
③「夢のあとに」/ドビュッシ-:
 「夢の中でみた不思議な光に満ちた愛らしいあなた、二人は地上を後に、まばゆく輝く天で恍惚の時を過ごした。悲しい目覚めの後、私はなおもあなたを求める・・」微妙な和声を刻む一貫したリズムの伴奏の上で、一度聴いたら忘れない名旋律が歌われます。
 
6.トスティ(F.Tosti 1846-1916)、パイジェッロ(G。Paisiello 1740-1816)
①「魅惑」/トスティ
 音楽教師としても活躍したトスティは、ロマンチックな美しい旋律を多く残しました。
「あなたのくれた花の香りが私の想いを乱し、あなたの眼差しは私を陶酔させる。あなたが語りかけると私は死ぬ思いだ・・」この曲はカンツォ-ネ風の有節歌曲で、一番では恋の喜びが、二番では恋の悲しみが歌われます。
 
②「ジプシー娘をお望みなら」/パイジェッロ
 バロック時代、ナポリ派の作曲家パイジェッロは100曲を超えるオペラブッファを作曲しました。しかし、今日では歌曲のアリアだけがイタリア古典歌曲として残っているだけです。この曲も「市場のジプシーたち」というオペラブッファのなかのカンツォネッタでした。
「優しく美しいジプシー娘、それは私。占いも恋も取り持ちも、何でもお任せ!」と明るく軽妙に自分を売り込み、カデンツで自慢の喉を披露します。
 

【第2部 岩河智子編曲童謡集(北海道初演)】

~歌って楽しむ童謡から、聞いて味わう童謡へ~
 
日本人の心の中に共通項としてある“童謡”誰もが歌って楽しむものですが、その童謡をクラシック音楽家のために編曲し聞いて味わう作品にと仕上げたものが編曲童謡です。
一流の詩と一級のメロディとで出来ている童謡ですが、残念なことにピアノ伴奏が単純すぎたり、一番、二番と繰り返すだけの構成(有節歌曲)であるために、どうしても変化が乏しくなりがちです。
そこで伴奏や構成に手を加え、クラシックの演奏家の幅広い表現力を最大限に生かすことで、詩の持っている奥行きや旋律の呼び覚ますイメ-ジをより深く広く表わすような作品へと創り変えたのです。
 時には、和声やピアノ伴奏にも手を入れて芸術歌曲のように、時には別の曲とコラ-ジュさせてパロディックな珍曲に。また、時にはしみじみとした重唱にとおなじみのメロディが生まれ変わります。
 私たちの大切な財産である童謡をこうした形で楽しみながら味わいつつ残していくのも、クラシックに携わる我々の使命ではないかと思います。
 

■(アナリ-ゼ)とは

 (アナリ-ゼ)とは、「音楽分析」つまり楽譜に隠されているいろいろな意味を読み取る作業です。つまり、歌う主旋律のことだけでなく、その伴奏に隠されている特徴・和音の変化の意味・旋律の指向性・音域の変化・バスの進行・アコ-ギクなどなど、作曲家が楽譜に書き込んだ仕掛けや想いを隅々まで掘り起こし理解することです。さしてさらに、今生きる私たちにとっての価値を見定め、演奏する人間の想いとともに奏でます。
 私たちはアナリ-ゼを学問的な研究としてではなく、演奏表現を考えてゆくための手かがり・想像力を刺激する材料として取り組んでいます。
 

■(オペラ表現探求会)とは

Ⅰ 楽譜を仔細に研究することで、それまで見えなかったイメ-ジをつかむ技術を身につけ、それをもとに演奏家各人の個性を生かした自由で大胆かつ繊細な表現を行ってゆく。
Ⅱ また、この方法論自体を多くの音楽家に織らせることで、音楽表現上の創造的な対話が多く行われ、音楽界全体が活発になることを目指す。
Ⅲ そして、そういった私たちの活動が、これまで一部の音楽ファンに閉じ込められていたクラシック音楽というものを、広く観客に開放すると信じ、多くの公演活動を積極的に行ってゆく。

 

 

 
 
 
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