2011年10月アーカイブ

作品の中で生き続けること

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特に今年に入ってからです。
かつて非常にお世話になったシャンソン歌手の方の著書が書店に平積みになっていたり、
雑誌でそれらが紹介されるのを見かけるようになりました。
先日は札幌の書店のショーウインドーにも並べられており、
懐かしいような、叶うならまたその方にお会いしたいような・・・
いろいろな思いが沸いてきてしばしその前で立ち尽くしてしまいました。
 
紙の手触り、表紙のデザインや字体、色、それらすべてがお気に入りの本です。
 
その方は昨年の夏に他界されました。
いつも背筋をピンと伸ばしてステージに立ち、あらゆることに妥協せず、自分にも他人にも厳しく・・・
しかしきちんとフォローできるまさに姉御肌。
その内なるエネルギーから発せられるオーラは、今のアイドルの比ではありませんでした。
 
これまで何冊もの著書を出版されていますが、最近こうしてまた書店に平積みになり、
実際に手に取って読み返していると、いろいろなことが思い出されます。
まだどこかで元気にマイクを持って歌っているのではないか、
今年新たに出版された特集本、これをもし見たらどういう言葉を発するだろうか・・・
今でもそう思ってしまうくらいの存在感でした。
 
「作品の中で生き続ける」とはよく使われる言葉。確かにそうで、
ページを繰るたびにご本人の声が聞こえてくるかのよう。
しかしそれは同時に天に召されたということも意味しているわけです。
 
書店に並べられた彼女の本の前で、
いつもその二つの現実を感じながら立ち尽くしている自分がいます。