ジワ〜っときます、北欧映画。

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札幌室内歌劇場の支持会員の皆さんにお送りしているニュース「Piccola」では、映画の中でちょっと気になった音楽シーンについてお話していますが、今回は音楽にとらわれずに・・・

先日、「歓びを歌にのせて」という映画を観ました。上映していたのは渋谷・文化村にあるル・シネマ。ここで上映される作品は私にとって興味のあるものが多く、相性がいい映画館の一つです。
この「歓びを歌にのせて」はスウェーデンの作品。主人公ダニエルが世界的な指揮者として活躍するものの、ハードなスケジュールとそれに伴うストレスで倒れてしまい、子供時代に過ごした村に戻る。その村の聖歌隊の指揮を引き受け、人とのふれあい、音楽を分かち合うことで勇気と自信を取り戻していく、しかし・・・というストーリー。
こう言ってしまうと、“なーんだ、よくある感動作ではないか”と思ってしまいますが、実際は書き出すと長くなってしまうくらい様々な人間模様、ドラマが詰まっているのです。そのドラマは文字にしてしまうと“そんなことか、よくあるよくある”というような日常的なもの。でもそれぞれにとっては一大事であり、決して些細なことではなくて。
さてこの映画ではハリウッド映画でお目にかかるようなスタイルも顔も抜群!というタイプの俳優は一人も登場しません。けれど登場人物がそれまで歩んできた道が見えるくらいに、一人一人、非常に存在感があります。それだけにどんなに憎い役の人にも同情してしまい、肩にポンと手を置いてあげたくなるような気持ちにさせられます。
確かにダニエルという主人公を中心に話は進むのですが、同時に3つ、いやそれ以上の話も進行しています。にもかかわらずしつこい感じが全くない。人物もストーリーも日常的なのに引き込まれてしまう。きっとハリウッドならこのストーリーを題材に、感動を促すような音楽を入れて3つくらいの作品を作ってしまうんだろうなぁ。

思えば北欧の映画は、“ここが見せ場”というようなピンポイントがあるわけではないのになぜか印象に残ります。「キッチン・ストーリー」や「歌え!フィッシャーマン」なんかも誰がどうということではないのに、自分の中に余韻が長く続き、今でも印象に残っています。
北欧の空気がスパイスなのでしょうか?