ドイツ・リートは宝物

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毎回様々なテーマで演奏が繰り広げられる時計台コンサート。昨日は「素晴らしきドイツ・リートの世界」・・・

まだ涼しい風が吹く夏の北海道。日の暮れ始めた頃、時計台の幻想的な雰囲気に溶け込むように、則竹さんの歌うシューベルトの菩提樹でコンサートが始まりました。東京に住んでいるとなかなか時計台コンサートにめぐり合うことができないのですが、今回はちょうど先日のオペラコンサートとその他の稽古で北海道に滞在中です。
昨日はシューベルトやシューマン、ブラームスの名曲をはじめ、後期ロマン派から近代までの作品が演奏されました。私はドイツ・リートが大好きなので、いろいろな時代の曲を味わうことが出来、充実した一夜になりました。

さていつも思うことがあります。オペラが“大きな飛び出す絵本”ならば、ドイツ・リートは“宝石箱”だなぁと・・・
歌曲はそれぞれの音楽のスタイルの中で詩の世界が広がり、様々な感情、情景が歌われています。しかしオペラのように一人の登場人物を生きている(演じている)のとは違ってどこか冷静に、客観的になる要素も持ち合わせています。短い曲の中で繰り広げられる音と言葉の世界。それは様々な大きさ、輝きを持った宝石のようです。しかも宝石箱の中にきちんと並べられて納まっている宝石。宝石箱から取り出せばその存在を露呈し、しっかり主張を持った輝きを放つ・・・

そこで、昨日のコンサートでついつい考えていました。
シューベルトは透明ではない艶のあるはっきりした色の石。ブラームスは一見地味だけどジワジワと味が出てくるからスルメかな?いやいや酒の肴ではなく、深みのある濃い色。アメジストとか。シューマン、彼はロマンチスト。(そうでなければ「女の愛と生涯」など書けないだろうなあ)曲によっていろいろだけど、カットされたものというよりは丸みのあるもの。R・シュトラウスはキラキラの宝石。複数の色がデザインされた指輪なんかを想像してしまいますが、昨日石田さんが歌った作品はじっくり味わいのあるもの、でもスケールもあるし・・・そういえばR・シュトラウスの妻は恐かったらしい。ヒンデミットはナゾの石。普段はグレーなのに手に取ると七色に変化するような・・・
なんて、心の中でブツブツ呟いていた昨日の私。ますますリートに魅力を感じたのでありました。