バランス

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それは“つりあい、均衡”と広辞苑様は述べています。
英国ロイヤル・バレエ団のトップダンサー吉田都さんが、熊川哲也氏率いるK・バレエ・カンパニーに移籍すると言う記事を目にしました。K・バレエ・カンパニーは一度観てみたいと思っているのですが、さすがに人気があり、なかなかそのチャンスがありません。これでチケット入手も一層難しくなりそうな予感。

この移籍記事の中で、私の頭から離れない内容があります。
“彼女の正確なテクニックと音楽性、控えめで気品ある立ち居振る舞い。大型化し、ボーイッシュな魅力で圧倒するダンサーが増える中で、それは一服の清涼剤である。現代バレエが忘れがちな何かを思い出させてくれる。”と・・・
確かにそうなのです。最近の物事は迫力に押されることが多いような気がします。一瞬のインパクトで見ている側に強烈な印象を与える。もう少し味わう時間があってもいいのでは?と思っても次から次に物事が進んでいく。余談ですが先日、地下鉄で近くに乗り合わせた男子中学生4人。彼らは何を話しているのか解らないくらいしゃべるスピードが速い速い!!「日本人じゃないな?」と思ったくらいです。もっと落ち着いて話してもいいんだよ・・・

そう、迫力。与える側のエネルギーもさることながら、それを受け入れる側にもそれ相当の器が必要。器(会場の大きさ)にあった表現というのもまた必要であったりします。映画でいえば、ミニシアターで観るのが味わい深い作品もあれば、逆に大画面でなければ体感できない圧倒的な作品もあったり。テレビドラマの女優さんがそのままの演技で舞台のお芝居に出てしまっては貧相な表現で終わってしまう。フルオケで大合唱つきのグランドオペラを小ホールでやったとしたら、耳がちぎれてしまいそう。やはりそのスケールは大ホールで聴きたい・・・すべてはバランスが大事ということなのでしょう。

始めの話に戻りますが、吉田都さん。大きな舞台でも、その繊細で細やかな踊りで観客を魅了するのですから、テクニックと表現力は卓越したものがあるのでしょう。
どんな規模の公演でも繊細さを伝えることができる。とかく小さくなりがちで本当に難しい”繊細さ”というもの。それこそ技術をコントロールできるバランス感覚がなければ出来ないことのような気もします。