ドン・ジョヴァンニ

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今年はモーツァルトイヤー。とにかく今年はモーツァルトのコンサートが目白押しです。
3連休2日目の今日の東京は快晴。私は芸術の秋を過ごしました。

東京文化会館で公演された「ドン・ジョヴァンニ」を観てきました。東京文化会館といえば、我が札幌室内歌劇場が「唱歌の学校」や「中山晋平物語」の東京公演を行ったところ。今日はその大ホールでの公演、ぱんぱんびちびちの満席でした。
早くから完売となっていた公演でしたが、日頃何かとお世話になっている歌手の方がタイトルロールを歌っており、その姿を見に行かねばということでようやく取れたチケットはS席。かなりど真ん中の席でした。俗に言う「良い席」というのでしょうが・・・どちらかというと後ろで全体を見たいタチなので、私にしては想定外の席でした。
S席。本当に想定外というか何というか。S席に招待されている方々に囲まれている状態でした。どこを向いても著名人!オペラ界、芸能界など多彩な顔ぶれ。人気オペラのS席ではよくあることですが、さすがに非日常を感じずにはいられなかったような・・・。
この公演はドンナ・アンナに佐藤しのぶさん、ドン・オッターヴィオに錦織健さんなど、錚錚たるメンバーでした。
学生の頃、一年かけてこのオペラを勉強したことがありました。その時はレチタチーヴォに四苦八苦し、アンサンブルにアップアップし、アリアの難しさにへこみ・・・そんな苦労(?)もあってか、音楽が進むにつれてちょっと懐かしさも感じていました。
それにしてもこの「ドン・ジョヴァンニ」というオペラ、音楽はとても優れていて簡潔かつ充実、濃厚。ストーリーはともかく音楽はとても好きです。どこを切り取っても魅力的な音楽。セリアかブッファか?という談義もありますが、きっとこれはテキストを素直に読み演じた結果がセリアと感じたらそうなのだろうし、逆にブッファだなと思ったらブッファということなのでしょう。

今日この公演で感じた新たな発見(あくまで個人的な見解ですので・・・あしからず)、それはドン・ジョヴァンニにモーツァルト自身の影を感じたということ。天真爛漫な性格、神童ともてはやされ絶頂期をすごしていたモーツァルトも晩期は金銭的に苦労をし、必ずしもオペラの初演で大喝采を浴びたわけではない。晩期に完成されたこのオペラのデモーニッシュな部分は奔放さの陰に隠された彼の芯の部分をのぞかせているように感じます。
好色の騎士ドン・ジョヴァンニはもしかしたら彼自身、悪気は全く無くただただ一直線に女性を求めている、しかしやがてその奔放さの罰を受ける時がやって来る。
決してモーツァルトがドン・ジョヴァンニのような性格だというのではない。地獄に落ちる、そこに至るまでの音楽のシリアスさ、濃密さが限りなくモーツァルト自身の核心に迫っているような・・・後にあのレクイエムが生まれるのだなと予感してしまう何かを感じてしまいます。

オペラには時代を超えてもなお新鮮さを失わない魅力ある作品が沢山あります。何度歌っても何年歌っても新たな発見が山ほど・・・歌手の探求は一生続くのであります。