ぼんやり考えていました。

|
私がオペラ修行中の頃、俳優座の女優さんが演技指導に来て下さっていました。今でも忘れられない言葉があります。「オペラは、音楽が感情をさらに大きく表現してくれる」と。
先日、お芝居を観に行きました。よくあんなに長いセリフを覚えられるなぁ、といつも思うのですが、その度に“長いオペラの歌詞を覚えているじゃないの!”と言われます。そういえばそうだなぁと気がつくわけですが、やはり暗譜は大変な時もあり・・・しかし「覚えることは仕事なのだ」と自分に鞭を打つのです。
それはさておき、お芝居です。
セリフだけでストーリーが進んでいく。オペラやミュージカルとは違い、そこには音楽で巧みに何かを表現することはない。
しかし、セリフの言い回しにも当然ながら緩急があり、それによってキャラクターも浮き彫りになります。またセリフとセリフの掛け合いは、音楽はなくともテンポは存在する。そしてシーンとした無音の時間もあり、その緊張感はオペラでオーケストラがシリアスに盛り上げてくれる瞬間とはまた違った味わいです。
音楽があるのも利点。無いのもまた利点。
オペラは一度音楽が鳴り始めれば、止まることなくどんどん進んでいきます。もし歌詞を忘れてしまったりしても音楽は進んでいく。ということはお話も進んでいく。しかし芝居はセリフが出てこなければそこで話はストップしてしまう。でもアドリブを使えたりすることもできる。そう、セリフを思い出す時間も取れるかもしれない。オペラなら完全に待ってはくれない・・・
やはり音楽があるのも利点。無いのもまた利点。生かすも殺すも役者次第なんだなと実感して劇場をあとにしました。

試練を与えられることもしばしばありますが、私にとって音楽は強〜い味方です。